計量標準総合センター : National Metrology Insutitute of Japan (NMIJ)

時間周波数科

時間・周波数標準は、10-16という最高レベルの相対不確かさを持ち、各種の標準の中で群を抜いている。原子時計は、時間・周波数標準において中心的な役割を果たし、計測標準の分野に大きく貢献するだけではなく、物理学の基礎研究やGPSなどの応用分野にも大きなインパクトを与えている。原子時計間の精密周波数比較や制御技術は、国際原子時(TAI)や協定世界時(UTC)の生成に寄与し、社会における役割は大きいものがある。また、光周波数コム技術は、時間・周波数標準と長さ標準をつなぎ、長さの精密測定や高速光通信など産業界への波及効果も期待される。

時間標準研究室 セシウム一次周波数標準器、原子時計、位相雑音、低温サファイア発振器
波長標準研究室 光周波数標準、光格子時計、超狭線幅レーザー、光周波数コム、周波数安定化レーザー
周波数システム研究室 高安定時系発生、高精度周波数比較、周波数標準供給技術、遠隔校正技術、周波数制御技術

時間標準研究室

時間の単位である1秒は「セシウム133の原子の基底状態の二つの超微細構造準位の間の遷移に対応する放射の周期の9 192 631 770倍の継続時間」と定義されています。時間標準研究室では、「秒」を上記の定義に基づいて実現するためのセシウム原子周波数標準器の開発とその高精度化に関する研究を行っています。また、これらの開発のための要素技術として、(1)光による原子の操作(レーザー冷却)、(2)周波数安定化レーザー、(3)極低位相雑音マイクロ波発振器、(4)ガスセルなどを利用した小型実用周波数標準器、(5)各種発振器や素子の周波数安定度や位相雑音評価、などの研究を行っています。

原子泉方式一次周波数標準器の模式図 原子泉方式一次周波数標準器、NMIJ-F2 低温サファイア発振器の周波数安定度

波長標準研究室

光はマイクロ波に比べおよそ100000倍高い周波数であることから、光を用いた新しい原子時計(光周波数標準)により更に正確な時計が達成できます。光周波数標準の正確さは、既に秒の定義を実現しているセシウムによる周波数標準を凌駕しており、光周波数を用いた秒の再定義が検討されています。波長標準研究室では、光格子に捕捉された中性原子群の光遷移を周波数の基準として、超狭線幅レーザーを発振器として用いる「光格子時計」を開発しています。また、光の周波数を正確に測ることのできる「光周波数コム」を用いた日本の長さの国家標準は私たちの研究室で開発され、光格子時計はもちろん、日本の製造業や大容量光通信に貢献しています。

Yb光格子時計の超高真空装置 磁気光学トラップされたSr原子集団 産総研で開発された光周波数コム発生用モード同期ファイバーレーザー

周波数システム研究室

日本の時間周波数国家標準UTC(NMIJ)を高安定に生成するため、温湿度環境の向上、原子時計間の精密周波数比較と制御技術の開発を行っています(図A、B)。また協定世界時(UTC)の生成に寄与すべく、諸外国の原子時計とUTC(NMIJ)の位相を、衛星を用いて高精度に比較しています(図C)。近年では光格子時計の開発進展に伴い、光ファイバを用いた超高精度比較技術の開発も進めています。こうして実現されたUTC(NMIJ)の基準信号を用いて10-14オーダーの不確かさで周波数校正を行っています。特にユーザにとって利便性が高いGPSを用いた遠隔校正サービスを行うとともに関連技術の高度化も進めています。

図A. 日本の時間周波数国家標準UTC(NMIJ)を生成する原子時計群
(セシウム原子時計と水素メーザ)
図B 高精度位相計測・周波数制御・分配増幅システム 図C 衛星双方向時刻比較システムの地上設備